着物屋をやっています

兵庫県の着物屋 有限会社みさ和の2代目がつらつらと商いに関係ある事ない事書いています

大塚呉服店物語 ⑩

 

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こんにちはオオツカです。

先日お電話を頂きました。

 

「中川政七商店の中川です。ブログ読んだよ。⑨まで見たよ。」

 

;`;:゛;`(;゚;ж;゚; )ブフォ

 

か、勝手に書いちゃってますけどマズいっすか? 大丈夫ですか?

 

「良いよ全然。書いてねー。」

 

あ、よかった。

はい。OK頂きました。ふうううう。

というか気を使ってもらったかのかはアレですがとりあえず一安心。

だったら最初から許可とっとけよって話ですが。

 

そんな行き当たりばったりのブログですがなんとか頑張って参ります。

ちょっとここのところバタバタで全然更新出来ていなかったこのお話

進めていきますねー。

 

「もうコレ、リフォームじゃなくて建築ですよ」と

後に語ったデザイナーのセキユウスケ氏。

 

関さんのHP

 

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図面もありませんでしたので

ちょっと調べてみると、

やはりというか建物の問題が山積しまくりでした。

 

・築年数が80年と古い分、躯体部分の問題点が頻繁に発見

・水を大量に扱う(店内に井戸あり)お店だったので床、壁共に石とタイル

 しかも床は巨大な一枚石、でこぼこで平らではなく全体的に傾いている

・間口が狭すぎ、段差も多く大きい

・謎の配線や配管が所々にありこれも別途調査が必要

・京都という場所的に(観光地の中心地に近い)外装含め様々な制限あり

  

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彼は今回の依頼を受けてもらう直前に海外である仕事を完了させていました。

それがコチラ。

Papabubble Amsterdam

 

日本でも主要都市数店舗展開しているキャンディーショップ「パパブブレ

papabubble HP

全世界で展開していますがその中のオランダ、アムステルダムの店舗設計です。

こちらの物件も築年数が相当期間経っており様々な苦労、工夫をされた様ですが

単純に古い部分を取り払い、その上から化粧をするというやり方ではなく

「良い部分は残し、活用する」その上で、「新しい要素」を組み入れる

というプランを京都のお店にも取り入れたいという考えでした。

 

2012年の9月上旬に中川政七商店さんの東京展示会中にそのリフォーム案の

プレゼンテーションが行なわれました。展示会会場内で。(笑)

詳細は省きますが模型なども作成して頂いて数種類の案の中から検討を

行ないます。

 

正直、決して多いとはいえない予算の中でさまざまな意見を出し合い

今後やっていくお店の方針を整えながらそれを反映する事のできる

お店のデザインを詰めていきます。

 

ただ奇麗に整えるリフォームは簡単に出来る。

でも今回のプロジェクトはいろいろなお店としての意思や

建物としての歴史も残していきたいという結論になりました。

 

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 解体前の写真です。

ここから壊す部分は壊していきますよ。

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 床部分オラア!!

とにかく石が一枚一枚でかいので道路工事ばりに細かくしないと

重くて運べないのと配管と井戸に気をつけながら壊してもらいます。

 

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 間口部分も壊します。

このように。

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 えい。

 

手作業です。

通りが観光地という事と狭い道に大きい車や工事車が入れないという制約の中

職人さんたちに頑張ってもらいました。

 

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 なにせ古い建物ですので手探りで補強を入れながら少しづつ解体作業を行ないます。

 

この間も関さんや中川さん、山田さんと打合せしながら現状の報告や

修正点などの話し合いをします。

関さんに至ってはこの物件の完成引き渡しまで数十回現地でチェックや指示の

ために現場に来てもらったと思います。

私もはじめてという事もありいろいろ教えて頂きながら極力現地に行って

問題点の共有や新アイデアやプランの修正などに参加させてもらいました。

 

思えばこの時に一つのモノを作り上げる事の大変さや手間暇をかけないと

人には思いを伝える事というのは難しいと教わったような気がします。

(ただ、私忘れっぽいので今でもどんどんご指摘頂きますが。スイマセン。)

 

 

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 さて、一旦蓋をしまして。

 

今回の工事の中で大変手間のかかる部分に入ってきます。

通常、古いタイルや壁などは剥がしたり上から塗料や壁を作ったりして

昔の部分は『なかった事』にする事が多いのですが今回は違います。

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それは、「削り」という作業。

この白いタイルを

 

【割らずに】

【一枚ずつグラインダーで手作業で】

【ムラはありながらでも整えて】

【削る】

 

職人さんからすると「マジかよ!!」という手間です。

 

この作業を行なおうとなった理由は、

 

・タイルが古いもので現在の規格ではもう作られていない。

・歴史あるお豆腐屋さんの存在をデザインを加えて残したい。

 (タイルに削り入れるとお豆腐っぽいんですよ)

・オーナーのおばあちゃんの男気(女気?)に答えたお店にしたい。

 

などなど。

私、そのプランを聞いた時にああー良いじゃないー位に思っていたのですが

実はものすごく大変な作業だったようでここでも様々な人にご協力頂きました。

 

まず職人さん。

このタイルを割らずに削るってかなり神経使う作業なんですね。

しかもよく考えたらタイルの総数は4桁な訳で、カツカツの行程の中に組み込む

作業としてはで勘弁してくれよレベルなわけです。

 

次に周囲の住民のみなさま。

「削る」わけですので音量も防音シートをしているとはいえ相当うるさく

しかも粉塵が漏れ出る訳です。期間と時間を決めて行ないます。

事前に私や店長、工事責任者でご挨拶とおことわりをしているとはいえ

クレームを頂く事になります。

 

そして、オーナーさんや商店会長さん

こちらもどういう事をするのかとご説明をしますが、

やはりクレームが入る場合は矢面に立たされる訳です。

どうゆう会社にお店貸してんの?とか、商店街が迷惑している!とか

コチラが耳にする前にこのお2人にクレームが入ったり圧力がかかる訳です。

 

実際この作業の前後に直接謝罪にいかせてもらったお家もありますが、

私が思っていたよりも少なく作業が完了する事が出来ました。

のちほど聞きましたが、

この期間中やはりオーナーや商店会長には相当数のクレームが

入っていたようですがお2人はその都度根気強く

「良いお店が出来るから協力して」と積極的に説得して頂いていたようです。

大変お手間をお掛けしました。本当にありがとうございました。

 

しかし、この時私が最もスゴいと思ったのはこの時のデザイナーの姿勢です。

結構な量の様々なクレームや作業の職人からの要望、仕事の簡略化の妥協案など

相談が多々あったようですが、

 

「どういう都合があろうが関係ない。約束した仕事を完遂してもらう」

と最後まで一歩も譲らなかった事です。

 

途中で様々な報告をもらっていた私は

” ああ、じゃあしょうがないか ”とか” 時間もないしまあ、良いか ”とか

思ってしまう事もありましたが彼は頑に職人さんや私を説得して

作業をスケジュール通り続けるように促していました。

 

この業界の人からすると当たり前の事なのかもしれないのですが、

彼らデザイーの伝えたい人に伝わるようにしようと思う意思、

こだわりの強さを私はこの時強く感じました。

 

そんな甘いものじゃないと。

 

周りに何をいわれようが、

自分にいろんな不利益や手間がかかろうが、

自分がやりたい事、伝えたい相手の為に最大限の努力を注ぎ込む姿勢は

この時ものすごく眩しいものに見えた思いがあります。

 

彼のその姿は今現在も変わっていません。

ちなみに今日も勉強させてもらいました!ありがとうございます!!

 

この時点で残りあと1ヶ月半。

同時進行で進みながら

”ソフト面” どういうお店にして、維持していくかという

お話はこの次に。

 

本日も最後まで読んで頂きましてありがとうございました。