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兵庫県の着物屋 有限会社みさ和の2代目がつらつらと商いに関係ある事ない事書いています

大塚呉服店物語 ⑦

 

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                                 Designed by Yusuke seki

 

「あのお豆腐屋さん借りましょうか?」

 

こんばんは。大塚です。

本当にこのノリでサラッと一言ですよ。

本日も続きから参りますよ。

 

 

 え。 マジっすか?

 

「聞くだけ。

聞くだけ聞いてみましょうよ。もしかするかもしれませんよ」

と中川さん。

 

打合せのみなさんとは一旦解散。

 

まあ、確かにお店の間口や総面積のなんかは現状のお店よりもだいぶ広い。

今のお店が5坪の2F建てだからおそらく倍くらいの広さかな。

 

とりあえず息子さんに聞いてみましょう。

 

「うーん。店舗として貸し出す事は考えてないんですよ。

母もゆっくり出来るように奥の住居部分と店舗部分を合わせた

住宅にしようと思っているんです。

というかまだ不動産やさんや工務店さんも決まってない状態なので…」

 

デスヨネー。

すいません変な事聞いちゃって。

一応名刺をお渡し。

ま、そりゃそうですよね。

 

で、みなさんにこの話のご報告をしたのち、

決めていかなきゃいけない

新ブランドのグランドデザイン。

 

なにを打ち出してなにを削っていくのか

 

なにを絞り込んでいくのか

 

どんなお客さまのためのお店をつくるのか

 

何をするにしても背骨となるコンセプトの部分をしっかりとみんなと

意見を出し合いながら作っていく。

やはりこの作業が一番時間がかかりました。

 

やはりというか不安になってしまうんですよ。

”絞り込んでいく作業”が。

 

今までのお客さまがいなくなってしまうんじゃないか?

商品の調達どうすんの?

スタッフが対応出来なくなってしまうんじゃないか?

 

とか。

 

実際スタッフや役員からも色々と不安や不満は出ました。

 

でもなにもやってもいない中で立ち止まって躊躇して中途半端な行動しか

今までして来なかった事が今の結果であるなら

もう、やっちゃおうと。

それから考えようと思っていました。

 

ので断行しよう。

 

いろんな異業種の事例やこれまでの着物業界の分析を

この時結構時間かけて徹底的に行ないました。

 

やる事、やりたい事、やりたくない事をきちんと分けよう。

 

レディースやメンズやキッズ、ヤングやミドルが混在するお店ではなく

どの層、どんなスタイルのお客さまにとことん好かれるように。

逆にいうとアンチも存在するくらいに突き詰めてみよう。

 

という事で新ブランドをつくるに当たって決めたものを並べてみます。

 

【 女性の普段着の着物以外はすべて取り扱わない 】

 

 振袖や七五三、婚礼など一切を切り離しました。メンズ、キッズも。

 ユニクロにスーツが置いていないように、エルメスに格安品が無いように、

 住み分けをしっかりとルールを作ってお客さまにも分かりやすくする事を

 意識した品揃えやカジュアルのシーンにふさわしいお店作りを行う。

 

【 価格の不安点をのぞく 】

 

 普段着、カジュアルである以上◯十万ではなく手が届く範囲内の

 商品構成にしよう。それも洋服ブランドと変わらないくらいの設定で

 探し、構成してみよう。

 

【 品揃えの方向性 】

 

 仕入れ担当が「あ、カワイイ」と感覚で仕入れるのではなく、

 お店が取り扱うべきもの、取り扱ってはいけないもののルールを決めて

 スタッフで共有出来る環境を作る。

 

【 デザインの要素を入れる 】

 

 お客さまの目に触れるすべての部分でデザインを意識して

 取り入れてみよう。あちこちぶれないように作り込んでみよう。

 他の着物屋さんがそんなに気にしてないんだからやってみよう。

 

この時はかなりふわーーーとした感じでしたがうっすらと

イメージが出来て来ている頃でした。

それをどのようにしてお店に反映出来るように形作っていくか。

もちろん現場のスタッフもですが会社全体で支えながらという空気にしなければ

いけないと思っていました。

 

そんな2012年の8月上旬。

 

一本の電話がアリ。

 

「高◯不動産と申します。今回なかやさんの物件を取り仕切る事に

 なりましたがオーナーの息子さんから店舗でとの件お聞きしています」

 

あー。でも住宅にされると聞いてますが?

 

「その予定ですが、御社になら考えてもいいとの事で」

 

え。マジすか。

 

で、お盆開けすぐに打ち合わせのために京都に向かいます。

不動産屋さんとオーナーさん交えてのお話。

 

「10年間以上すぐ隣で頑張っていた着物屋さんがウチでやりたいというなら

 手伝いたい。お宅なら貸してもいい。

 でなければどこにも貸さずに住宅にする」とおばあちゃんオーナー。

 

これはちょっと感動しましたよ。

 

正直、京都という地域はいわゆる県外者に対して冷たいイメージがあり

仲良くお付き合いをさせて頂くまでには結構時間とお付き合いが必要に

なる事が多いんです(すべてではありませんよあくまで)。

 

はじめは私の妹が立ち上げをしたお店が他のスタッフが引き継いで

しっかりとお店の運営だけでなくてご近所のお付き合いが出来ていたという

事の結果ですから。

 

スゴく頑張ってくれていたと。

しかもそれを見てくれていたという事ですよね。

うれしい。泣きそうになりましたがここはビジネスですので聞きますよー。

 

ただ、今営業しているお店は元々半住宅ですので格安でお借りしているんです。

で、この店舗はおよそ倍の広さがあります。

なのでお家賃についてなんですが〜といった時に、

 

「今お幾らくらいで借りていらっしゃるの?」

 

嘘ついてもしょうがないので◯◯です。と。

 

「じゃあ◯◯で」

 

詳しくはいいませんがアレです。

 

は?

 

え?いいんですか?

 

「応援しているんでねえ。良かったらな。」

 

 

  契   約   即   成   立

 

 

続きます。

 

今日も最後まで読んで頂いてありがとうございます。