着物屋をやっています

兵庫県の着物屋 有限会社みさ和の2代目がつらつらと商いに関係ある事ない事書いています

大塚呉服店物語 ⑥

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                          Designed by Yusuke seki 

前回までの物語

 

「外部のデザイナーが嫌いという経営者は多いです。

 でも、なんで?って突き詰めて考えると双方協力しない

 理由はないんですよね」            中川、山田両氏より

 

 

こんばんは。オオツカです。

いつものシリーズの続きに参りますが、もうちょっとで一旦完結するので

よろしくお付き合いのほどを…。

 

2012年の7月中旬の頃でこの日の事は今でもよく覚えているんです。

すごく良く晴れた日でカラッとはしているけど気温は30℃を超える真夏日

近所では工事かなにか朝から行なわれているようでガシンャガシャンと騒がしい。

 

今日は前回までのまとめと初のデザイナーさんを交えて

の打ち合わせ。

場所は弊社の京都店「WAKON京都」です。

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 「どうも関です」

 

こ、これがデザイナーという人ですか……。

見た目個性的な若い兄ちゃん的な風貌。

言葉の端々がまあ明るい。関西人風(やっぱり関西人でした)の様子。

この日「まあ、大丈夫じゃないですかねぇ」と連呼されていたのが印象的。

 

デザイナー

関祐介さんのHP

 

狭い店内(2F建て 7坪 築40年以上)の2Fで、

蒸し暑さが激しくエアコンの効きも良くない中、中川さんのオゴリで

ゴディバのアイスをつつきながら打合せのスタートです。

 

念のためフェイント掛けて後ろを振り向くとFテレビの取材の方と

目が合います。あ、ドウモ。

 

この狭い中で、今後の有限会社みさ和を背負って立つブランドを作るお話。

 

「まずどういうお店にしたいのかハッキリとさせる事からだと思うんです」

 

漠然とした雑談から、

「着物屋さんの問題点」や「フォーカスする部分」、

「整理して分かりやすくする部分」、「現時点で実現可能な事の洗い出し」を

経営者、バイヤー、デザイナーの視点からさまざまな意見を出してもらい

『なんで?』『やってないの?』『まだ?』と、フルボッコにして頂きました。

まとめると以下の通り、

 

・正装着と普段着を一緒に取り扱っている

・取り扱い商品の値段幅が大きすぎる

・子供向けのかわいいものから大人向けのシンプルなものまで混在している

・統一した店舗のイメージがないので雑然とした印象

・お店のコンセプトがわかりにくく、どの着物ファンに支持してもらうお店

 なのか、あるいは初心者向けなのか分かりづらい

・なんでも取り揃えているので一番得意な商品がなにか見えにくい

・雑貨のお客さまは着物のお客さまにはなりづらい。その逆も同じ

・HPなどWebでの発信、整備がまるでされていない

 

 などなどなど、

多分この日出た意見を全部上げていくとゆうに100項目以上になるので

この辺りにしますが、とにかくもっとお客さまに伝わりやすいお店にする為

にはやる事が山ほどあるという事。

 

それこそコンセプトから店舗ロゴからなにから取扱商品やスタッフの指導まで。

 

「それを分かりやすく、伝わりやすくする為に”デザイン”を取り入れる

 という事です。お店が誰に何を伝えたいのかと。

 まず、主となるしっかりした柱があってこそお店の個性を伸ばせるんです」

 

今のWAKONをリブランディングとして行なうべきか、

全く新しいブランドを作るべきなのか

 

「今後どう進めるかは大塚さんが最終判断される事なのでじっくり考えて下さい」

 

現状を打開する為にと動いては結局中途半端になっていつも後悔している。

今回こそはと思って腹は括って来ていますよ!

 

”新しいブランドを立ち上げる為にご協力をお願いします”とペコリ。

(一瞬ちょっと考えようかと迷ったのはナイショ)

 

 「フットワークの軽さこそが中小企業の持ち味ですからね。

 では我々もそのつもりでさまざまな点からサポートしていきますよ」

 と中川さん

 

「じゃあやるかどうかは別としてせっかく来てるんだし改装の可能性も

 考えてこの物件も色々と見ておいて関さん」

 と山田さん

 

デザイナー氏はいろんな道具を出して京都店を見ていきます。

もちろんこちらは図面もなく(元喫茶店兼住宅)、ひとつひとつ柱や床を

調べると若干顔が曇っているような……。

 

「昔の家だけあって床が傾いているのと1Fにある数本の柱

(店の中央とかにもある)を一本でも落とすと天井が落ちますねコレ

  なかなか歯ごたえのある物件ですねー」

「でもまあ、大丈夫じゃないですかねぇ」

 

「やるとしたら費用はかかる?」中川さん

 

「面積の割に結構かかるかも知れないです」関さん

 

「まあ、今後によるけど改装しないパターンも考えとかなきゃですね」山田さん

 

まあ、今日はこの辺で。

 

解散。っと?

 

ガシャンガシャン。

 

みんなで店の外に出ると冒頭の工事の音の正体が分かりました。

 

二軒隣のお店からでっかい冷蔵庫やらシンクなんかが取り外されトラックに

載せられているところでした。

そのお店がこちら、

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なかや豆腐店さん。

写真に写っているのが店主のおばあちゃん。

 

おじいちゃんと一緒に手作りの豆腐を作って直売や高級スーパーに

卸されたりしていた地元では有名なお店。よくTVなんかも出ておられました。

でも、おじいちゃんが亡くなられておばあちゃんお一人でされていたけど、

体力的にも大変という事で今回お店を閉められるそう。

 

ちょっとだけご挨拶してきますと私。

 

「残念やけどしょうがないねえ」とおばあちゃん。

この通りは古くから続く商店街で次々とお店がしまっていく時期でした。

他人の事とはいえなんかさみしいなあ。

今後はこちらを家に建て替えられるそうです。

たまたま立ち会いのため来られていた息子さんにもご挨拶して戻ります。

 

いやーすいません。

 

タクシーに乗り込むみなさんを見送る中で中川さんがポツリと、

 

 

 

「大塚さん」

 

 

 

「あのお豆腐屋さん借りましょうか」

 

 

 

  は、  え ?

 

 

 

 続きます。

 

 

本日も最後まで読んで頂いてありがとうございます。